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ではなぜ横縞より縦縞が「いき」と言えるのか、『「いき」の構造』に述べられていることには、その縞模様を認識するための私たちの目の位置関係と、そしてこの地球の重力という自然的要因があるのだそうだ。

 

まず一つめの理由として、左右に並行に位置する私たちの両眼は、左右に広がる横縞よりも垂直に走る縦縞のほうが、その『平行線を平行線として容易に知覚させる』のだということである。私たちの目は無意識的に、二本の平行線を認識するが、その二項対立的関係性がより明確に表現されているのが、横に走る平行線よりも縦に走る線なのだそうだ。交わることのない二本の線は、その対立関係をより顕著に示す。その二元性こそが「いき」の根元なのだと述べられている。
そしてもう一つの理由が、垂直に走る縦縞は重力に逆らうことのない軽さがあるということ。それはまさに降る雨や柳条と同じく、無理のない自然的な現象として存在している。故にボーダーよりストライプのほうが「いき」と言えるのだそうである。

 

インドカディで表現された「いき」なストライプ。そこにはインドならではの鮮やかな色彩表現はなく、奥深さの感じる紺藍色と薄い紅柿色というなんとも地味深い二色で構成されている。二色はそれぞれが一定の幅を持って規則的にリズミカルに切り替わっていく、過度なデザインのないごくシンプルなストライプ柄だ。だからこそ、そこには手織りならではのわずかながらの歪みが見え隠れする。日本的美意識を感じながらそこに同時にインドの手紡ぎ手織りの伝統文化も共存している一枚のシャツ。袖を通すたびに、文化と文化を横断することができるような一着が完成した。