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スムースでストレスフリーな肌触り以外に存在するはずの“気持ち良さ”を携えた服。そんな姿を求めたコレクションの制作途中に出会った生地の一つが、とある日本の生地屋さんがアーカイブしていたチェック柄。その生地をひと目見たとき、幼少期の記憶がふと蘇った。

 

田舎の祖父が営んでいた製麺所は、子供たちの恰好の遊び場だった。古い製麺機が並ぶその建物は伝統的な造りの日本家屋。幼き頃は気にも留めていなかったが、天井を見上げた時に見える竹で組み上げられた骨組みの迫力は今でも頭の片隅に残っていた。生地のチェック柄に懐かしさがこみ上げてきたのはそのためなのかもしれない。それと同時に、生地を見た時に感じた精緻な美しさや技術力の高さは、幼き自分は気づくことができなかったが、大人になった今では少し見出すことができた気がした。その美しさを、記憶と照らし合わせながら自分なりに再現してみたいと思ったのだ。

 

 

 

 

茅、竹、そしてがさりとした土塀で囲われたその家屋で過ごした時間。その時見た色、テクスチャー。 滑らかさやとろみのあるものとは全く違う、確かに感じる肌触りを求めて行き着いた格子柄のトロピカルウーステッドは、かさっと乾いたテクスチャーと生地の軽さを出すためにポリエステルを巻き付けたコットンネップ糸を使い、ポリエステルウールの杢糸で深みのある色彩を表現。思いがけず畳のような印象も感じさせる4色の糸で構成されたその柄のジャケットを羽織って深呼吸をしてみれば、いぐさの青々しい香りさえしてきそうである。