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茶室の網代天井から派生させた変形ヘリンボンのような織り模様は、2ndシーズンから微調整を繰り返し、アップデートを試みている生地の一つ。今シーズンは、ミュール紡績機を用いて紡績されたウールとシルクを撚り合わせた糸を甘く織り上げ仕立てたツイード。重厚感のある見た目に反し軽さと柔らかなタッチが生まれる。

 

シェットランドウールのツイード生地同様、見た目を裏切るような意外性を孕んだ生地は、その裏切りが、ものを見る時や着る時に無意識的で直感的な選択をしがちな私たちの行動に一石を投じてくれるものになるのではないだろうか。 直感的であることは自らの感性や価値観に対して争うことなく素直に反応することでもある。それは良い面もある一方で、ものごとに対する認識を阻害することもある。

作家の村上春樹はかつて著書で『情報が咀嚼に先行し、感覚が認識に先行し、批評が創造に先行している。(中略)これを文化的消耗と言わずしていったい何と言えばいいのか。』*と述べている。

 

 

一度目の前のものに対し疑問を持つこと、考えること。事前に得られる情報を鵜呑みにせず、目の前に提示されたものごとを一度自分の腹の底まで落とすこと。それらも含めた行為が服を着ることであり、それらも含めた行為全てが、ファッションという言葉が示す姿ではないだろうか。

 

 

*やがて哀しき外国語(講談社)